はじめに
後頭下筋群は、頭と首をつなぐ深部にある4つの小さな筋肉の総称で、頭の動きや姿勢の安定を支える重要な役割を担っています。しかし、この筋肉が硬直すると、単なる首こりにとどまらず、頭痛・めまい・眼精疲労・自律神経の乱れなど多彩な不調につながります。
本記事では、後頭下筋群の拘縮によって起こる代表的な症状と、そのメカニズム、さらに鍼灸でのアプローチをご紹介します。
後頭下筋群は以下の4つの筋肉から構成されます。
- 大後頭直筋(だいこうとうちょっきん)
- 小後頭直筋(しょうこうとうちょっきん)
- 上頭斜筋(じょうとうしゃきん)
- 下頭斜筋(かとうしゃきん)
これらは後頭骨と頚椎の上部をつなぎ、頭を上下左右に動かすときに働きます。特に「長時間のデスクワーク」「スマホ操作」「猫背姿勢」が続くと、常に緊張した状態になりやすいのが特徴です。
後頭下筋群の拘縮が引き起こす主な症状
① 緊張型頭痛・後頭部痛
後頭下筋群が硬直すると、後頭部からこめかみへと放散するような頭痛を起こします。これは筋肉そのものの緊張に加えて、近くを走る大後頭神経を圧迫してしまうためです。
② めまい・ふらつき
後頭下筋群は、姿勢制御に関わる深部感覚を脳へ送る役割を持っています。拘縮すると、この感覚入力が乱れ、めまいやふらつきを感じることがあります。
③ 眼精疲労・視覚のぼやけ
小後頭直筋や上頭斜筋の緊張は、視覚情報処理を行う神経系に影響し、目の奥の重だるさや視界のかすみを引き起こすことがあります。パソコンやスマホ作業後の「目の奥の痛み」と関連することも多いです。
④ 自律神経の乱れ
後頭下筋群周辺には、自律神経系と関係の深い神経核があります。筋肉が硬直し続けることで交感神経が優位になり、睡眠障害や動悸、不安感などの全身症状に発展するケースもあります。
鍼灸でのアプローチ
● 局所の筋緊張を和らげる
鍼を後頭下筋群のトリガーポイントに施すことで、深部の硬直を直接ゆるめられます。マッサージでは届きにくい筋肉へのアプローチが可能です。
● 神経圧迫の改善
大後頭神経や小後頭神経の通り道を解放し、頭痛やしびれを軽減します。
● 全身調整
後頭下筋群の緊張は、自律神経系にも影響するため、背中や手足へのツボを組み合わせ、全身のバランスを整える施術を行います。
日常生活でできるセルフケア
- 画面を見る位置を目の高さに
下を向く姿勢は後頭下筋群を最も緊張させます。 - 首のストレッチ
首をゆっくり後ろに倒し、左右に動かして可動域を広げましょう。 - 温める習慣
ホットタオルや入浴で首の後ろを温めると血流が改善し、筋肉のこわばりが和らぎます。
まとめ
後頭下筋群の拘縮は、単なる「首のこり」ではなく、頭痛・めまい・眼精疲労・自律神経の乱れなど、多彩な不調の原因となり得ます。
鍼灸治療では、この深部の筋肉にアプローチできるため、薬では改善しにくい症状に対しても効果が期待できます。
「慢性的な頭痛が薬で良くならない」「目の奥がつらい」「首の付け根が常に張っている」
そんな方は、一度後頭下筋群の状態をチェックしてみると良いでしょう。