■ 来院までの経緯
令和6年3月ごろより腰痛を発症。
5月ごろからは睾丸部の鈍痛・違和感が出始め、特に「座っている時に痛みが強くなる」のが特徴的でした。
仕事では長時間の車の運転が多く、痛みがある日は集中力が落ち、仕事にも支障をきたすように。
泌尿器科を受診したところ「慢性前立腺炎(Chronic Prostatitis)」と診断され、抗生剤などの投薬治療を受けるも、改善がみられず、当院を受診されました。
■ 施術経過
初診(9月28日)
初回は、慢性前立腺炎の背景にみられる陰部神経の緊張と腰部筋群の硬直を考慮し、
「陰部神経痛の施術」と「腰痛の施術」を同時に実施。
施術後は1週間後に再来予約。
第2診(10月4日)
「前回施術後、大きな変化なし」とのこと。
同様の施術を行い、経過観察。
第3診(10月11日)
「痛みに波が出てきた」「以前より少し楽」との報告。
回復の兆しが見られたため、従来の施術に加えて局所(会陰・仙骨部)への重点施術を実施。
第4診(10月18日)
施術後2〜3日は変化なしだったが、その後から睾丸痛が軽減。
痛みの波はあるが改善傾向。2週後に予約。
第5診(11月1日)
「痛い日もあるが、だいぶ楽」とのこと。
陰部神経痛の基本的アプローチを継続。
次回は2週後に設定。
第6診(11月15日)
前回施術から2週間、ほとんど痛みを感じなかったとのこと。
「陰部神経痛が落ち着くと、腰痛も消えた」との報告。
ここでいったん施術を終了し、再発時に再来院の方針に。
■ 再発とその後の経過
第7診(令和7年1月24日)
「睾丸痛・肛門痛が再発」「イライラが強い」との訴え。
自律神経の乱れを疑い、背部(華佗夾脊穴)への刺鍼を実施。
背骨の両脇には交感神経が走行しており、ストレスや緊張で背筋が硬くなるのはそのためです。
気持ちを落ち着かせる際に背中をさすりたくなるのも、こうした神経反応が関係しています。
さらに仙骨部の骨膜刺激、臀部の陰部神経点に9cmの鍼を用い30分通電。
施術終了。
第8診(2月4日)
前回施術後、痛みが断続的に。
「イライラは治まった」とのこと。
この回は背部への刺鍼を行わず、臀部の陰部神経点+経験的に見つけた治療点へ刺鍼し通電。
第9診(2月25日)
「痛みに波がある」「寒波のせいで痛みが増している感じ」との報告。
前回と同様の施術を実施。
第10診(3月5日)
「昨日は痛かったが今日は楽」「痛まない日がある」とのこと。
前回と同様の施術に加え、体幹側の独自治療点に刺鍼し、骨盤全体に響きが出る反応を確認。
通電を行い、施術終了。
■ 治療考察
この症例では、
- 長時間座位や運転による骨盤底筋・陰部神経の圧迫
- 精神的ストレスによる自律神経の乱れ
が複合的に関与していたと考えられます。
鍼灸施術では、**陰部神経・仙骨神経叢・腰部筋群・自律神経(交感神経)**への多角的アプローチを行うことで、
「睾丸痛の軽減」「腰痛の改善」「情緒の安定」といった変化が見られました。
■ まとめ
慢性前立腺炎は、単に前立腺だけの問題ではなく、
骨盤・神経・自律神経・心理的要因が複雑に関与しています。
にしむら鍼灸治療院では、こうした多因子性の症状に対して、
西洋医学的な診断を尊重しつつ、神経学・東洋医学の両面から根本改善を目指す施術を行っています。
💡 同じように「座ると痛い」「睾丸や肛門が痛む」「検査で異常がない」と言われた方へ
原因がわからず悩まれている場合、ぜひ一度ご相談ください。












