大阪狭山市 にしむら鍼灸治療院 慢性前立腺炎などの「慢性骨盤痛症候群」専門鍼灸院
「慢性前立腺炎に鍼?」
そう思われる男性は、まだまだ多いのではないでしょうか。
鍼灸というと、
「肩こりや腰痛にするもの」
「昔ながらのツボ治療」
というイメージを持っている方もいると思います。
まして、
「前立腺の症状に鍼をする」
と言われると、
「前立腺に鍼を刺すの?」
と疑問に思うのも当然です。
実際には、慢性前立腺炎、特に慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS:3か月以上続く骨盤周辺の痛みや排尿症状などを特徴とする状態)に対する鍼治療は、前立腺そのものに鍼を刺して治すという考え方ではありません。
では、いったい鍼は何に作用するのでしょうか?
今回は、慢性前立腺炎に対する鍼治療について、
「鍼を刺すと身体の中で何が起こるのか?」
というところから、できるだけわかりやすく説明します。
まず、慢性前立腺炎の痛みは「前立腺だけ」の問題とは限りません
慢性前立腺炎やCP/CPPSでは、
- 会陰部が痛い
- 下腹部が重い
- 陰茎に違和感がある
- 睾丸が痛い
- 肛門周辺が痛い
- 鼠径部が痛い
- 腰やお尻が痛い
- 長時間座っていられない
- 車の運転で症状が悪化する
- 頻尿や排尿時の違和感がある
など、症状がさまざまです。
しかも、検査を受けても大きな異常が見つからないことがあります。
ここが慢性前立腺炎のつらいところです。
「痛いのに、検査では異常がない」
「薬を飲んでも痛みが残る」
「どこが悪いのか自分でもわからない」
という状態が長く続くことがあります。
そのため慢性骨盤痛では、前立腺だけではなく、神経や筋肉、痛みを調節する仕組みなどを含めて考えることが重要になります。
鍼を刺すと、身体の中で何が起こる?
鍼を皮膚や筋肉に刺すと、その刺激を感覚神経が受け取ります。
その情報は神経を通って脊髄や脳へ伝わります。
つまり鍼治療は、
「鍼を刺した場所だけに何かをする」
という単純なものではありません。
鍼による刺激が神経系に伝わり、その結果として痛みを調節する仕組みなどに影響すると考えられています。
イメージすると、
鍼の刺激
↓
感覚神経が刺激される
↓
脊髄・脳へ情報が伝わる
↓
痛みを調節する仕組みが働く
↓
痛みの感じ方に変化が起こる可能性
という流れです。
では、もう少し具体的に見ていきましょう。
① 鍼は「痛みを抑える神経の仕組み」に働きかける
私たちの身体には、
「痛みを感じる仕組み」
だけではなく、
「痛みを抑える仕組み」
もあります。
この痛みを抑える仕組みの一つが、下行性疼痛抑制系(かこうせいとうつうよくせいけい:脳から脊髄へ信号を送り、痛みの伝わり方を抑える神経の仕組み)です。
少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、
脳から「痛みを抑えよう」という指令を出すシステム
と考えてください。
鍼治療による鎮痛作用には、このような痛みを抑える神経系が関係することが研究されています。
慢性痛では、痛みの信号が長期間続くことで、神経系が過敏になっている場合があります。
そのため、単純に「痛い場所を治す」というだけではなく、
痛みを伝える神経の働きそのものを調節する
という考え方が重要になります。
② 身体にもともとある「鎮痛システム」に関係する
鍼の作用を研究するときによく出てくる言葉に、
内因性オピオイド(ないげんせいオピオイド:身体の中で自然につくられ、痛みを抑える働きに関係する物質)
があります。
代表的なものに、エンドルフィンなどがあります。
鍼刺激によって、このような身体本来の鎮痛システムが関係することが、基礎研究で調べられてきました。
つまり、
鍼から鎮痛薬を注入しているわけではありません。
身体がもともと持っている、
「痛みを抑える力」
に鍼刺激が影響すると考えられているのです。
③ 脳の「痛みの感じ方」にも関係する
慢性痛を理解するうえで、もう一つ大切なのが脳です。
痛みは、
「身体のどこかで発生した信号」
がそのまま痛みになるわけではありません。
脳がその情報を受け取り、
「これはどのくらい危険なのか」
「どのくらい痛いのか」
などを判断することで、私たちは痛みとして感じます。
鍼治療では、脳の痛みに関係するネットワークにも変化が起こる可能性が、脳画像研究などで調べられています。
これは、
「痛みは気のせい」
という意味ではありません。
むしろ逆です。
慢性痛は、神経系全体が関係する複雑な現象だからこそ、痛みを感じる仕組みにも目を向ける必要がある
ということです。
④ 骨盤周囲の筋肉にもアプローチする
慢性前立腺炎の患者さんでは、
「会陰が痛い」
という症状だけでなく、
「お尻が張っている」
「腰も痛い」
「座っていると骨盤周辺がつらい」
ということがあります。
このような場合、骨盤周囲の筋肉の緊張が症状に関係している可能性があります。
そこで鍼治療では、
痛い場所に必ず鍼をするわけではありません。
例えば会陰部が痛くても、腰や臀部(お尻)、骨盤周囲の筋肉などを確認し、その状態に合わせて施術することがあります。
これは、
「前立腺に直接鍼を刺して治す」
という治療ではありません。
患者さんの身体全体を見ながら、症状に関係していると考えられる部分へ刺激を加えていくのです。
⑤ 自律神経にも関係する
慢性的な痛みが続くと、身体が常に緊張しているような状態になることがあります。
ここで関係するのが、
自律神経(じりつしんけい:心拍、血圧、消化など、意識しなくても身体の働きを調整している神経)
です。
慢性痛では、痛みだけでなく、
- 睡眠が浅い
- 身体が緊張する
- 疲れやすい
- 痛みが気になってリラックスできない
といった問題が重なることがあります。
鍼と自律神経の関係についても研究されています。鍼による痛みの調節には、神経系だけでなく自律神経を介した仕組みが関係する可能性が考えられています。
ただし、
「鍼をすれば自律神経が必ず整う」
と単純に言えるわけではありません。
ここは大切なところです。
⑥ 「炎症」にも関係する可能性が研究されている
慢性前立腺炎という名前を聞くと、
「炎症を鍼で消すのかな?」
と思うかもしれません。
しかし、CP/CPPSは単純な細菌感染だけで説明できないケースがあります。
鍼治療と炎症反応の関係についても研究されています。
例えば、鍼治療によって炎症に関係する物質に変化が起こる可能性が研究されています。
ただし、
「鍼が前立腺の炎症を直接治す」
と断定することはできません。
慢性前立腺炎・CP/CPPSは、炎症だけではなく、神経、筋肉、排尿症状などさまざまな要素が関係する複雑な状態だからです。
では、本当に慢性前立腺炎に鍼は効果があるの?
ここは鍼灸師の経験談だけではなく、研究を見てみましょう。
2023年のシステマティックレビュー・メタ解析(複数の研究結果を集め、統計的にまとめて評価する研究)では、CP/CPPSに対する鍼治療について、10件のRCT(ランダム化比較試験:治療を受ける人を無作為に分け、別の治療などと比較する研究方法)、11試験、798人が解析されました。
その結果、鍼治療は比較対象と比べて、
- 痛み
- CP/CPPSの症状全体
- 排尿症状
- 生活の質
などの改善が報告されています。
別の2022年のGRADE評価によるメタ解析でも、鍼治療は特に痛みの改善について有効性が示されています。
ここで出てくる、
GRADE(グレード:研究結果がどの程度信頼できるかを評価する方法)
という考え方も重要です。
研究で「効果があった」と報告されたからといって、それだけで「絶対に効く」とは言えません。
研究の質、研究人数、研究方法、長期的な効果などを含めて考える必要があります。
2026年の研究でも、鍼治療は研究されています
さらに新しい研究もあります。
2026年に発表されたネットワークメタ解析(複数の治療法を同じ土俵で比較する統計的な研究方法)では、2025年10月までに発表された45件のRCT、3,534人が対象となりました。
鍼関連治療は、薬物療法と比較した研究でCP/CPPSの症状改善と関連していました。
一方で、この研究では、
- 多くの研究が中国で行われている
- エビデンスの確実性は主に低~中等度
- 長期的な追跡データが限られている
といった限界も指摘されています。
つまり、現在の研究を正直にまとめると、
「慢性前立腺炎・CP/CPPSに対して鍼治療の効果を示す研究は複数ある。しかし、誰にでも必ず効くと断言できるほど研究が完成しているわけではない」
という位置づけです。
私は、このくらい正確に説明することが大切だと考えています。
鍼治療は「前立腺に鍼を刺す治療」ではありません
ここまで読んでいただくと、最初の疑問に戻ります。
「慢性前立腺炎に、なぜ鍼なの?」
その答えは、
前立腺そのものだけを治療対象として考えないから
です。
慢性骨盤痛では、
- 痛みを伝える神経
- 痛みを抑える神経
- 骨盤周囲の筋肉
- 自律神経
- 痛みに対する脳の反応
など、複数の仕組みが関係しています。
鍼治療は、こうした身体の仕組みに刺激を加える治療として研究されています。
だから、
「会陰が痛いから会陰に鍼をする」
とは限りません。
「どこに痛みがあるか」だけでなく、
「なぜその痛みが続いているのか」
を考えることが重要なのです。
「鍼って何をしているの?」と思っていた方へ
鍼は、魔法ではありません。
一回の施術ですべての症状がなくなるわけでもありません。
また、鍼の作用機序についても、まだすべてが解明されているわけではありません。研究では複数の神経・生理学的な仕組みが示されていますが、単一のメカニズムだけで説明できるものではありません。
それでも、
「鍼は昔からあるから効く」
という説明だけではなく、
「鍼刺激が神経や痛みの調節システムにどのように関係するのか」
というところまで研究されていることは、知っておいてほしいと思います。
慢性前立腺炎で悩んでいる方へ
長く続く会陰部や下腹部の痛みは、周囲の人にはなかなか理解してもらえません。
検査では大きな異常がない。
薬を飲んでも痛みが残る。
座っているとつらい。
車の運転が苦痛。
仕事に集中できない。
「いつまでこの状態が続くんだろう」
と不安になることもあると思います。
そんなときに、鍼治療を知っておくことも一つの選択肢です。
当院は大阪市内ではなく、大阪狭山市東茱萸木にあります。
大阪市、堺市、富田林市、河内長野市などから、慢性前立腺炎・慢性骨盤痛についてご相談いただいています。
当院では、前立腺そのものに鍼をするのではなく、症状や身体の状態を確認しながら、腰部・臀部・骨盤周囲などを含めて施術を考えます。
「慢性前立腺炎だから、前立腺だけを見る」
のではなく、
「その痛みを抱えている身体全体を見る」
ことを大切にしています。
鍼治療を受けるかどうかは、メリットだけでなく限界やリスクも知ったうえで、ご自身で判断してください。
そして、発熱、血尿、急激な症状の悪化などがある場合は、鍼灸より先に泌尿器科で診察を受けることが大切です。
※この記事は鍼治療の効果を保証するものではありません。慢性前立腺炎・慢性骨盤痛の症状や経過には個人差があります。
*予約なしの来院やお電話でのご相談はお控え願います。院長一人ですべての業務を行っておりますので施術中などは対応できないこともございます。LINEからのご相談は無料です。気になること、お知りになりたいことなど長文でも構いません遠慮なくご相談ください。➡https://lin.ee/5X2dY7a















